いざ、ヴェルダニア王国へ

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さらにユーリの手をとったまま立ち上がり、ぐいぐいと距離を詰めてくる。 「ミーア王女、お噂に違わぬお美しいお姿で。花のかんばせとは正に貴方のこと。貴国に咲くどの花々よりも、王女が美しく咲き誇っております……!」 「えっ、いや……ありがとうございます。ディータ様」 「私のことはどうかディータとお呼びください……。貴方を我がヴェルダニアへお連れする役目が私ということ、神に感謝します。」 大仰な言葉を並べられ、ユーリは思わず彼から後ずさる。しかし気がついた時には腰に手を回されていて、眼前にはディータの端整な顔が近づいて来ていた。 そして、頬に柔らかい感触と耳に短く響くリップ音。 ユーリは何がなんだか理解出来ずただされるがまま立ち尽くすしかなかった。 「貴方を婚約者にする、クロード王子が恨めしい。私がこのまま連れ攫ってしまいたいくらい……。」 ユーリにしか聞こえない甘い声で囁くディータ。 しかし次の瞬間、ユーリの背後から手が伸びてきて、彼をディータから引き剥がすように勢い良く抱き寄せる。 「そのように同盟国の王女を口説くのが、ヴェルダニア流の挨拶なのですか?」 いつから謁見の間にいたのか、フランツが自分の背後にいることにユーリは気がついた。 見上げてみると、フランツはいつも以上に眉間に深い皺を刻んでディータを睨んでいる。 「それはあまりにも無礼かと。」 「ふぅん。ならば突然出てきて、挨拶もない貴方はもっと無礼ですね。」 睨み合い、互いに火花を散らすフランツとディータ。 あまりの剣幕に、ユーリはフランツの腕を抜けて二人の間に入る。 「ディータ様……。どうか臣下の無礼をお許しください。」 なんとかフランツに目線を送り、落ち着くよう指示をする。彼は不満気にユーリを見るが、やがて一歩引き胸に手を当てる。 「私はハーディテェルツ王国兵一番隊隊長フランツ・クライネルトと申します。」 「……貴方が?フランツ・クライネルトといえば我が国でも有名ですよ。素晴らしい剣の腕をお持ちだと。」 ディータの言葉に一番驚いたのはユーリだ。 まさか自分の幼馴染が大国でも名を知らしめるほどだったとは思わず、フランツを振り返る。
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