いざ、ヴェルダニア王国へ

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「是非、手合わせをお願いできませんか?貴方の剣の腕を拝見したい。」 「……見世物ではありませんので。私の剣は王家の為だけに振るうことにしています。」 「左様ですか。それは残念。」 ディータは爽やかな笑みを浮かべると、やっと王の元へと戻って行った。 安心したユーリは少し背伸びをし、フランツに耳打ちをする。 「フランツ!お前倒れてたんじゃなかったのか?」 「ユーリ、さっきは悪かった。あまりのことで取り乱してしまった。今はもう大丈夫だ。」 「ユーリ言うな!俺のことはミーアと呼ぶように!」 すると、フランツがユーリの姿を頭からつま先までじっと睨みつけるように見る。 「本当にミーアそっくりだ。可愛らしいけど、俺はいつものユーリの方が好きだな。」 「え?」 「あっ、いや!なんでもない!」 顔を耳まで真っ赤にして慌てて逸らすフランツ。 やはりまだ体調が悪く熱があるのではと、ユーリは思ったが本人が大丈夫だというのでそうなのだろう。 気にしないことにした。 「それではミーア、準備が出来次第ヴェルダニアの馬車へ」 王に呼ばれ、ユーリは慌てて姿勢を正す。 「はい、父上。」 「一先ず、婚約発表の日までだ。しっかりとヴェルダニア王国をその目で見て来なさい。」 そして王は次にアンリとフランツに向き直る。 「アンリ・ギースラー。お前も侍女としてミーアと共にヴェルダニアへ同行してくれ。」 「はい、王様。勿論です。」 「あとはフランツ・クライネルト。ミーアの護衛としてヴェルダニアへ同行することを希望したと聞いている。」 「はい、王様」 フランツが王の前に跪き、頭を垂れる。 「ヴェルダニア王国が大陸でも有数な、豊かで強い国だとは承知しています。しかし情勢が不安定な今、お近くで王女をお守りしたいのです。」 「お前の腕は私も存じている。ミーアの護衛は頼んだぞ!」 「はい、仰せのままに」 そうしてヴェルダニア王国へユーリと共に向かう臣下が決まった。 「では、我々は馬車の準備をして参ります。また後ほど。」 ディータが騎士達を率いて謁見の間を出ていき、扉が閉まる重圧な音が響き渡る。 その直後、誰ともなく謁見の間にいる全員が深い溜息をついた。 「ふぅ、バレなかった!」
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