いざ、ヴェルダニア王国へ

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そして行く先にそびえ立つ、この国の歴史ある偉大なヴェルダニア王城。 ついに目的地に辿り着き、馬車の扉が開かれた。 「ミーア王女、我がヴェルダニア王城へ到着致しました。お手をどうぞ。」 ディータに手を差し伸べられ、ユーリは彼の手をとる。そして深緑のドレスを風で靡かせ、ヴェルダニアの地に降り立った。 そこは石畳の広がる広場で、すでに騎士達が一行を迎える為に整列している。 「彼らはヴェルダニア王国騎士団の赤騎士隊。私の部下です。」 ディータの指す騎士達は皆、真紅のサーコートを着て、腰には金色の獅子が刻まれた剣を下げている。 「ディータ。よく戻られました。」 整列する騎士達が作る道の奥から、白いローブを纏った男が真っ直ぐユーリの元へと歩いてくる。 「これはこれは、宰相閣下ではないですか。」 この国の宰相、リヒャルト・グレル。彼の登場に、広場が張り詰めた緊張感に包まれた。 リヒャルトは肩あたりで切りそろえられた曙色の真っ直ぐな髪を揺らして、ユーリの前でひざまずく。 「ミーア王女、お初にお目にかかります。私はヴェルダニア王国宰相、リヒャルト・グレルと申します。」 そしてディータと初対面の時と同様に、手の甲に唇を落とすリヒャルト。 この挨拶に慣れないユーリは、柔らかな唇の感触にびくっと体を震わせる。 「この度は遥々我が城まで御足労頂き、大変恐縮しております。」 少ししてリヒャルトが立ち上がったので、ユーリは彼に向き直りドレスの裾を持ち、頭を下げる。 「ハーディテェルツ王国から参りました、ミーア・トラン・ハーディテェルツと申します。こちらこそ、宰相閣下直々の御出迎え、心より感謝致します。」 ヴェルダニア王国の現宰相は、非常に若く優秀な青年だという噂はユーリも耳にしたことがあった。 そしてトゥーラクに対し、武力によっての侵攻を主張する強硬派の筆頭であるということも。 「居館にミーア王女の部屋を用意させております。ここからは僭越ながら私がご案内させて頂きますので。」 リヒャルトの灰色の瞳が、ユーリの傍らに立つディータに移る。 「ディータ、御苦労様です。貴方は騎士団長に報告した後に、しばらく長旅の疲れを休めて下さい。」
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