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「ユーリ王子、淑女はそんなことしませんよ?」
アンリがユーリの荷物を部屋に運び入れながら小さくため息をつく。
「ちょっとだけ休憩させてよ。」
リヒャルトの話によると、クロードはヴェルダニア国王と共に今は公務で城を空けているらしく、夕刻には戻るそうだ。
その時にいよいよ、クロードとの対面である。
「ミーアの婚約者かあ。どんな人だろう……。」
行く行くは自分の義理の弟にもなるクロードに想いを馳せるユーリ。
「本当に冷酷なのかなあ。でもヴェルダニアの人みんな優しいし……。」
「ユーリ、お前は本当に隙がある!上辺に騙されるなよ!」
突然、フランツがベッドに寝転がるユーリの横に座る。
「皆、腹の底では何を考えているか分からないようなヤツらだ!とくにあのディータとかいう男!」
何故かディータを目の敵にしているフランツに、ユーリは呆れた眼差しを送った。フランツはディータへの怒りでそれには気付いていない。
「ちょっと!フランツ様!」
「ん?」
アンリの怒鳴り声が聞こえてユーリとフランツが揃ってそちらを見る。
彼女は肩を震わせてフランツを睨んでいた。
「嫁入り前の淑女の部屋に入るなんて許せません!しかもベッドの上なんて破廉恥な!」
「いや、淑女って……ユーリだし。」
アンリはフランツの言葉を無視し、無理やり彼の腕を引いてベッドから引き摺り落とす。
「護衛の男が部屋を自由に出入りしてるなんて、王女の悪い噂が立ちます!出て行って!」
「いや!おかしい!俺はユーリの護衛だぞ!」
「部屋の前で護衛しててください!」
そのままの勢いで、アンリは喚くフランツを部屋から締め出してしまった。そして扉の鍵を閉めるとユーリを振り返る。
「ユーリ王子、淑女はベッドに入ってくる男を拒絶するものです。」
「え?そうなの?だってフランツだよ?」
「……むしろ、淑女じゃなくても!ユーリ王子はフランツ様がベッドに入って来たら拒絶して下さい!」
「……なんで?」
「ユーリ王子は危機感が足りません!」
アンリの言葉がいまいち理解出来ず、ユーリは小首を傾げる。
「別にフランツとはよく一緒に寝てたけど……。」
「ちょっと王子、それは問題発言ですよ。」
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