臨死対戦(りんしたいせん)

3/11
前へ
/11ページ
次へ
アンタが取材拒否されたのは“勝也(かつや)”の事だろ?そうそう、あの、 顎がとんがって、ぶすっとした、しかめっ面のアイツ。 昭和男児の生き残りみたいな堅物君だよ。 アイツはウチの常連でね。ここは、見ての通り、6人座りのカウンターと、 詰めて3人のテーブル二つって小さいとこだからさ。 常連さんでもいなきゃ、とてもやってけねぇ、店なんよ。その常連達の中で、 勝也は面倒見のいい兄貴分な立ち回りでさ。元々、無口な野郎なんだけど、 相談事や1人のちょっと寂しい夜に付き合ってやるような気さくな奴でね。 ウチとしても助かっていた。最も、それが災いしたのかもしんねぇが… それは、ある夜の事だった… 「どうです、勝也さん?一緒に行ってくれませんか?」 いつものように、お決まりのカウンター席、奥に陣取っていた勝也に、酒は飲めねぇが、 ただ飯にありつこうとする学生の“ジュン”が、店に来ていた若い奴等引き連れて、 “心霊スポットに行こう”と言い出したのさ。 場所は“S沢廃村”県境にある、山ん中の小さな村だよ。 その辺の事情込みのアンタに話す必要はねぇと思うが、一応言っておくと、 何が出るか知らねぇが、行方不明者に、そこから帰ってきて、頭おかしくなった奴が 大勢いるなんて噂の“超ヤバスポット”さ。 「妙な話が絶えない場所だ…止めといた方がいい。」 始め、勝也はそう言って断っていた。俺もコップ磨きながら、頷いたよ。若ぇウチは 何でも冒険に好奇心、大いに結構!だけど、最初から“ヤバい!”とわかる場所に 首突っ込むのは、馬鹿のやる事だからな。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加