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アンタが取材拒否されたのは“勝也(かつや)”の事だろ?そうそう、あの、
顎がとんがって、ぶすっとした、しかめっ面のアイツ。
昭和男児の生き残りみたいな堅物君だよ。
アイツはウチの常連でね。ここは、見ての通り、6人座りのカウンターと、
詰めて3人のテーブル二つって小さいとこだからさ。
常連さんでもいなきゃ、とてもやってけねぇ、店なんよ。その常連達の中で、
勝也は面倒見のいい兄貴分な立ち回りでさ。元々、無口な野郎なんだけど、
相談事や1人のちょっと寂しい夜に付き合ってやるような気さくな奴でね。
ウチとしても助かっていた。最も、それが災いしたのかもしんねぇが…
それは、ある夜の事だった…
「どうです、勝也さん?一緒に行ってくれませんか?」
いつものように、お決まりのカウンター席、奥に陣取っていた勝也に、酒は飲めねぇが、
ただ飯にありつこうとする学生の“ジュン”が、店に来ていた若い奴等引き連れて、
“心霊スポットに行こう”と言い出したのさ。
場所は“S沢廃村”県境にある、山ん中の小さな村だよ。
その辺の事情込みのアンタに話す必要はねぇと思うが、一応言っておくと、
何が出るか知らねぇが、行方不明者に、そこから帰ってきて、頭おかしくなった奴が
大勢いるなんて噂の“超ヤバスポット”さ。
「妙な話が絶えない場所だ…止めといた方がいい。」
始め、勝也はそう言って断っていた。俺もコップ磨きながら、頷いたよ。若ぇウチは
何でも冒険に好奇心、大いに結構!だけど、最初から“ヤバい!”とわかる場所に
首突っ込むのは、馬鹿のやる事だからな。
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