あらすじ

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 シンクローニオが空から降ってくる。それは、人に憑りつき、成長して、また空に還る。動物の姿をして徐々に人間の体から生えてくるけれど、気づく人はいない。  誰にも見えないシンクローニオが見える少年、集トオヤは、シンクローニオに感染した人々が、口々に同じ意見を述べている毎日に、無力感を抱いていた。人には見えないシンクローニオに対して、避けたり驚いたりするトオヤについても、彼らは口々に言う。嫌だと。なんの悪気も持たずに平気で言う。  高校一年も終わろうとしている冬、トオヤは教室でいつも通りに友人のシンクローニオを引き剥がす。そんなことをしても、数日後には再発してまたシンクローニオは生えてくるけれど、それでも友人くらいは他人の意見に流されたままでいてほしくは無くて。だが、その直後に、大鎌を持った猫耳猫尻尾の少女が表れる。誰も彼女に気づかない中、彼女はトオヤが見えていることに気づき、それがきっかけで二人はやがて、ともにシンクローニオを人間から引き剥がすでも消去するでもなく、両者が共生するように導くよう協力することになる。アルニャと名乗るその少女の言う通りに行えば、再発することなくシンクローニオを人から分離できる。そのためには、発症者がより多く自己で満たされたときに、アルニャが両者を切り離す必要がある。アルニャのキスマークがトオヤの体に残っている間だけ、トオヤは人の中の自己とシンクローニオの比率を色で見ることができた。トオヤが、発症者の達成感が最大化したタイミングを伝え、アルニャが切除するコンビネーションの上達に従って、二人の距離は縮まってゆく。  何人かの、人とシンクローニオを治療していく中で、トオヤの無力感は薄れていき、それに反して別れが近づくのを知ったアルニャは元気がなくなってゆく。アルニャは、過去にトオヤの体から空へと還ったシンクローニオだったのだ。他人には見えないシンクローニオが見える体質と、近しい人々の死や自身の瀕死体験からくるトオヤの心理状態が、アルニャを特別な人型シンクローニオにしたのだった。  二人は、互いを必要としながらも、別々の考えを持った個であることに感謝の言葉と再会の誓いを述べて、それぞれの日常に還ってゆく。以前よりも過ごしやすくなった日常へと。
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