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「紗南さんっ・・・」
必死になって走り紗南さんを見つけたのは、メールを受け取ってから五分ほど経った頃だった。
建物と建物の間で、男の人三人と紗南さんが話しているところを見つけた。
「ヒロくん」
そこには今までに見たことのない、か弱く泣きそうな顔の紗南さんがいた。
紗南さんを見つけると、すぐに駆け寄った。
「何してるんすか」
ガラの悪い男たちが、俺を見て笑った。
「何だよ、男? あー、だから断ったの?」
「別に、男いたっていいのに」
「いいじゃん、ここで彼氏に許可取ったら?」
紗南さんとどんな話をしていたのかは分からないけど、兎に角紗南さんを守ろうと必死になった。
「行きましょう」
どんなに強そうな男たちだって、怖くない。だって、俺は天才何だから。
紗南さんの手を握って走りだす。紗南さんの手は小さくて、やっぱりか弱い女の子なんだと思わせる。こうしてみれば、可愛い女の子だってのに、勿体ない。
「何泣いてるんすか、紗南さんらしくない」
今日だけは、俺の勝ちかもしれないな。
「何よ、ヘタレのくせに」
いつもの意地悪な紗南さんは、一体どこにいったのだろうか。言い返す言葉も弱くて、まるで小さい子供みたいだ。
「もう大丈夫ですよ」
走ってきてから大分たった所で、一度立ち止まった。
「えっ? ちょ、紗南さん?」
俺のパーカーの裾を掴んで、抱き着いてくる。
「ひ、ヒロくん、ありがと、怖かった・・・」
な、なんだこの、この可愛い生物は・・・。
「だ、大丈夫ですよ」
魔女の目にも涙ってか・・・。
俺にしがみつく紗南さんの頭を優しく撫でてみる。多分、今日くらいしか許されないから。
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