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「俺が家まで送ってあげるべきでしたね、すみません」
涙を拭いながら、紗南さんが俺を見つめる。・・・か、可愛い・・・。
って。完全に紗南さんの勝利だ・・・。そもそも何だ、このおかしな勝負は。
「家まで送りますよ」
「うん、ありがと・・・」
「どうかしました?」
「・・・いや、別に。情けない所見せちゃって、ごめん」
やっぱりプライドは高いんだな。流石意地悪魔女だ。
「紗南さん、家帰るの嫌だったら、今日は俺の家泊まりますか?」
紗南さんの頬が、少しだけ赤くなる。あ、しまった。
「何よ、この変態魔人」
いつもの調子は取り戻せないみたいで、紗南さんは笑っていた。
「手、出さないでよ? 今生理中だし」
「な、何言ってるんすか!? ちょ、そういうのは・・・」
「嘘なんだけど、ヒロくんってばどうしたの?」
ニヤリと笑う。あ、いつもの紗南さんだ。
「別に。ほら、行きますよ」
紗南さんの手を握ったまま歩き始める。いつもの調子に戻った紗南さんが、何も言わずに手を握っていたから、少しだけ嬉しかった。
・・・完全に、俺の負けだ。
天才の俺を落とすなんて、相当な力をもった魔女だ。
まぁ、天才な俺は恋なんてしないけど。
ただ少し、紗南さんの事が気になるだけだ。
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