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「わぁ、美味しそう」
運ばれてきたパンケーキの前で、スマートフォンを構えていた紗南さんが、一気に写真を撮り始めた。
写真を撮って、一体何に使うのだろうか。
「ふふ、凄いなぁ」
パンケーキを切りながら分かりやすくはしゃいでいる。
なんだ、紗南さんも可愛い女の子じゃないか。・・・って、俺もとうとう頭がおかしくなってきた。甘ったるい匂いのせいなのか、はたまた気が付かないうちに紗南さんに毒林檎を食わされたか。
・・・後者の可能性が高い。
「はい、ヒロくんもどーぞ」
「・・・紗南さん?」
「んー?」
「何ですか、これ」
「え? ん、美味い。ヒロくんも食べなよ」
おかしくないか!? 三段中の二段と、たーっぷり乗った生クリーム。これ、全部俺が食べろっていうのか?
「ちょっと、紗南さん? なんか、これ、おかしくないですか?」
にっこりと笑って紗南さんにパンケーキの乗った皿を返す。
「ヒロくん、お願い?」
・・・悪魔か。なんだよ、なんだよこの・・・。不覚にもドキッとしてしまった。なんでこんなに意地悪な奴に限って、こんなに整った顔立ちなんだ。
やっぱり勝ち目なんてないのか・・・。
仕方なく、ふわっと膨らんだパンケーキを口の中一杯に頬張った。甘い。甘すぎる。目の前で幸せそうにパンケーキを頬張る紗南さんが。なんて・・・別にうまいこと言ったつもりなんてないけど。
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