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くだらない人生
「くだらない人生だった」
雨露に濡れたひまわりの植木鉢がベランダで咲く木造アパートの一室で、自作のヒノキ机の上で口から泡を吹き突っ伏し、サーキュレーターの風にバタバタとはためく一億円の宝くじの券を握り締めて死んでいる自分自身を見つめながら、ゴッホは力なく呟いた。
臨死体験というのは生前によく知っていたが、まさか本当に自分が死んで、自分自身の死体を目の当たりにすると、初めて蝋人形を見た時のような滑稽な感じがした。
幼少の頃に父親に連れられて、東京タワーの蝋人形館をよく見に行ったが、精巧な作りに恐怖心を感じながらも、どこか「ハハハ」と笑いが込み上げる自分がいた。
こうして改めて自分の死体を客観的に眺めてみると、ただ単に「ゴッホの自画像に似ているから」と、飲み屋で上司に付けられたあだ名も、あながち間違いではなかったと思った。
自らを「テオ」と名乗るこの上司は、「俺とお前は運命共同体だ」と、二人きりになると耳元で呪文のように囁いた。
この会社に転職してから、一年半しか経っていないのだが。
まざまざと自分の遺体を観察していると、これまた滑稽な案が生まれてきた。
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