葉瑠花と奏汰の初めての夏

3/13
前へ
/13ページ
次へ
奏汰君とこの音楽室で出会ってから、3ヶ月になろうかとしている7月。私はほぼ毎日この音楽室に通っている。帰国してからの母はあまりメディアにでなくなった。ピアノの方面でもあまり露出がなくなってきたので、ピアニスト「月島あやめ」を知る人も少なくなってか、音楽室のピアノを見たり触ったりという人はいなかった。初日に出会った失礼な男の子以外は。 最近では奏汰君の演奏をきくだけでなく、私も実際ピアノを弾いている。舞ちゃんの音楽の才能にはとても叶わないと諦めていたピアノ。奏汰君の技術には遠く及ばないが、二人で弾いているととても幸せな気分になった。一部を除いては…。 「そこ違う!!」ピシッ!奏汰君の定規が私の左手に直撃する。 「いたーい。音無君のばかぁ。」涙目で左手をさする。 「はぁーん?どの口が言ってるのかなぁ?」 私のほっぺを両手で摘まんで引っ張る。 私は首を振っていやいやする。 「嶋田さんが言ったんだぞ。10回間違えたら定規でやれって。」 「そうだけどさ…。」ほっぺを擦りながら睨み付ける。 実はfirst loveを秘かに特訓中なのだ。ママやパパをビックリさせるために。 が、どうしても最後のサビがうまくいかない。焦った私は、10回間違えたら罰を頂戴って言ってしまったのだ。 今日の10回目。約束通り彼は私に罰を与えた。 悔しい。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加