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奏汰君とこの音楽室で出会ってから、3ヶ月になろうかとしている7月。私はほぼ毎日この音楽室に通っている。帰国してからの母はあまりメディアにでなくなった。ピアノの方面でもあまり露出がなくなってきたので、ピアニスト「月島あやめ」を知る人も少なくなってか、音楽室のピアノを見たり触ったりという人はいなかった。初日に出会った失礼な男の子以外は。
最近では奏汰君の演奏をきくだけでなく、私も実際ピアノを弾いている。舞ちゃんの音楽の才能にはとても叶わないと諦めていたピアノ。奏汰君の技術には遠く及ばないが、二人で弾いているととても幸せな気分になった。一部を除いては…。
「そこ違う!!」ピシッ!奏汰君の定規が私の左手に直撃する。
「いたーい。音無君のばかぁ。」涙目で左手をさする。
「はぁーん?どの口が言ってるのかなぁ?」
私のほっぺを両手で摘まんで引っ張る。
私は首を振っていやいやする。
「嶋田さんが言ったんだぞ。10回間違えたら定規でやれって。」
「そうだけどさ…。」ほっぺを擦りながら睨み付ける。
実はfirst loveを秘かに特訓中なのだ。ママやパパをビックリさせるために。
が、どうしても最後のサビがうまくいかない。焦った私は、10回間違えたら罰を頂戴って言ってしまったのだ。
今日の10回目。約束通り彼は私に罰を与えた。
悔しい。
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