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屋上の強風に煽られながら、俺は低くうなった。
「だめだ……なんつーか、嘘くさい」
思い通りの言葉が打てず苛立ち、LINEの文字をざくっと消した。
九月の三週目。秋雨前線の影響でここ数日どんよりした曇り空が続いていた。
時折、サッカー部の威勢のいいかけ声やテニス部の打球音が聞こえてくる。
グラウンドが狭く他部と交代使用のため、俺の所属する陸上部は毎週月曜日がオフだ。
なんのしばりもなく楽しく過ごせる日だというのに、心は空と同じ暗く冴えない。
ため息をつくと、寄りかかっていたフェンスがきしんだ音をたてた。
帰るか。突っ立っていても時間の無駄だ。
俺は歩きながらスマホを制服のポケットにしまい、校舎に続くドアを勢いよく開けた。
「きゃあっ」
「えっ?」
ドアノブを引いた瞬間、俺の胸に女の子が転がり込んできた。
とっさに腕を伸ばし受け止める。
内側のドアにもたれていたようで、体勢を整える間もなく外側に――つまり、俺のほうへ倒れてきたのだ。
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