59人が本棚に入れています
本棚に追加
にもかかわらず、俺の話の断片を拾って繋ぎ合わせて、紗菜は図書館から探し出してきてくれた。
「まいった……見事なフェイント」
嬉しさと申し訳なさが入り混じった気持ちで、懐かしく、そして愛おしくページをめくった。
そうだ。最後の願いは確か――思い出しかけた瞬間、本の間からひらりとメモ用紙が落ちた。コンクリの床に落ちた紙片を拾い上げ、俺は絶句した。
写真だ。しかも俺の。のんきに笑ってやがるし。
どういう趣向だよと面食らいながら写真をひっくり返すと、ネイビーのインクでメッセージが書かれていた。
『藤野くんのことが、好き』
心臓が止まるかと思った。どうしてだよ。ケンカしてひどいこと言ったのに。
すごく傷つけたのに、何で俺のこと、好きだなんて言うんだよ。
弾かれたように俺は階段を駆け下りた。いても立ってもいられなかった。
紗菜はまだいるだろうか、校舎のどこかに。それとも帰ってしまったか。
最初のコメントを投稿しよう!