Rainy day

8/10
前へ
/10ページ
次へ
   屋上で会った時、思い切って謝れば良かったんだ。  そうしたら、本を探してくれたお礼もすぐにできた。  紗菜の思いやりがどれだけ嬉しかったかも、すぐに伝えられた。  なのに俺は追いかけるのをためらった。  本当に終わりかもしれない。そう覚悟したとき、 「藤野くん……」  ためらいがちに声を掛けられ、はっとして顔を上げた。  整然と並んだロッカーの横に立っていたのは紗菜だった。 「紗菜、もう帰ったのかと」  俺は短く安堵の息をもらした。 「雨が急に降ってきたから、小降りになるまで待とうかと思ったの」 「良かった、会えて。これ、読んだよ」  本を掲げながら駆け寄ると、紗菜が不思議そうに俺を見た。 「三つの願い? もう読んだの?」 「違う、メッセージのほう」  閉じた本を開き写真を取り出すと、紗菜が目をみはり頬を真っ赤に染めた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加