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屋上で会った時、思い切って謝れば良かったんだ。
そうしたら、本を探してくれたお礼もすぐにできた。
紗菜の思いやりがどれだけ嬉しかったかも、すぐに伝えられた。
なのに俺は追いかけるのをためらった。
本当に終わりかもしれない。そう覚悟したとき、
「藤野くん……」
ためらいがちに声を掛けられ、はっとして顔を上げた。
整然と並んだロッカーの横に立っていたのは紗菜だった。
「紗菜、もう帰ったのかと」
俺は短く安堵の息をもらした。
「雨が急に降ってきたから、小降りになるまで待とうかと思ったの」
「良かった、会えて。これ、読んだよ」
本を掲げながら駆け寄ると、紗菜が不思議そうに俺を見た。
「三つの願い? もう読んだの?」
「違う、メッセージのほう」
閉じた本を開き写真を取り出すと、紗菜が目をみはり頬を真っ赤に染めた。
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