59人が本棚に入れています
本棚に追加
「これ……! ないと思って探してたの! どこにあったの!?」
「本に挟まってた」
「うそぉ。忘れて、忘れて! これは、藤野くんに渡すはずじゃなかったの。
秘密だったの!」
あわてて紗菜が、俺の手から写真を取り上げた。その動揺っぷりが可愛い。
「秘密って言っても、もう読んじゃったし。紗菜の気持ちも忘れなきゃだめなのか」
紗菜が困惑した表情で俺を見上げる。
「わたしの気持ちって……」
「俺のことが好きって書いてあった。それ、もう時効?」
だったら嫌だなと思いつつ、紗菜の答えを待った。
間が怖い、早く何か言ってくれ。
「時効なわけ、ないじゃない」
じわっと紗菜の瞳から、大粒の涙が溢れた。
「ケンカして、すごく、すごく、後悔してたんだよ……わたし、素直になれなくて。
藤野くん、ごめんね」
最初のコメントを投稿しよう!