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『そこがお前の行くべき場所だよ』
まただ。
彼の声がする。
ここ、が。
……そうか。
ここに来るために、俺は公園まで運ばれたんだ。
何もできない荷物として。全部を失って、ここまで流れ着いたんだ。
頭が、ぼーっとしてきた。
まるで夢の中にいるような気分。
一歩、前に進む。
足元の枯れ葉が重力に吸い込まれる。
一瞬、家族の顔を思い出す。
視線は下へと引っ張られる。
……お荷物はもういらないよな。積み荷を降ろした方がきっと車も軽くなるだろ。
もう、悩む必要がなくなった。俺はきっと違うところに行くべきだ。
「行ってきます」
下半身に力を加え、冷え切った筋肉を無理矢理伸ばす。そのまま体は重力に委ねられた。
一瞬零れた悲鳴を抑えようと口を塞ぐ。
――これで、いい。そう思った矢先の事だ。
「いっ」
崖から伸びている木の根が、腕に引っ掛かった。
だが、安堵する間もなく体は滑落していく。
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