嗤う桜

5/6
前へ
/16ページ
次へ
「てめぇどこ行って――」 「ごめんなさい。ごめんなさい。……ごめん、なさい」  呆然としたまま、俺はずっと謝り続けた。  頭に付いた枯れ葉も取らずにひたすら口だけ動かした。  そんな俺を見て……なぜか父親は許してくれた。  父親に腕を引かれて、ゆっくりと歩みを進める。さっきまで自分の乗っていた四輪駆動車が見えた。  当たり前の風景が何年も昔のように感じた。不思議と込み出す涙。  だが、それを止めるかのように。 『ははは、そうだ。そのままでいい。お前はこの地獄を、全うしろ』  すでに枯れた、桜の木。  ……後ろからそんな声が聞こえた気がする。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加