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紫の紫陽花が、光る雫を浮かべて咲いている。
雨は上がり、夕焼けの空が顔を出す。
先程すれ違った紺色の傘を思い浮かべて、少し口元を緩めた。
あいつもこの空を見ているのだろうか。
父と母は、ちゃんと俺の言った通りのものを買ってきてくれただろうか。
あいつは絵が好きだ。俺にはよくわからないが、絵を見ている時のあいつは、どんな時よりも幸せそうに見える。何かに夢中になれるあいつが、たまに、すごく羨ましい。
俺のせいで学校を転校する羽目になったが、うまくやれているのだろうか。
絵は、書いているのだろうか。
何もかも、俺にはよくわからない。だから、ほんとはあいつのことをもっと知りたい。話したい。
俺が本屋で見つけたあの画集、気に入ってくれるだろうか。
ホールのケーキを大事に抱え、あいつの喜ぶ顔を想像しながら歩く。
この想いが最高のプレゼントになることを願って。
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