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私が死んだのは、野山から少しずつ蝉の音が近付いて木漏れ日が鋭さを増すような、そんな季節でした。
大きな未練と大きな未来への不安を抱えて、私は耐えられませんでした。そして何より、私をこんなに追い込んだあの人が、憎くて憎くて仕方がなかったのです。
だから私は死ぬことを選びました。彼を、呪うために。
お腹に折角やってきた子には申し訳なく思いました。しかしそれは私の命をこの世に繋ぎ留めるには些か頼りなく、細すぎる糸だった。せめてもう少し大きくなっていたのなら。もう少し早くこの子がお腹に宿っていれば。その糸は私を今も此岸と繋いでいてくれたのでしょう。
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