分署 警官達 囚人達

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 「2階からの警戒では不十分だと?」  木戸が訊く。  東谷は頷いた。「敵が次にどんな攻撃を仕掛けてくるかわからない。それに、道の駅の状況も見てきたいんです」  「その必要性はわかるが、ここが手薄になるのはまずいだろう。正直言って、あんたが一番の戦力だ」  板谷が言った。まだ痛むのか、しきりに首筋をさすっている。  「じゃあ、俺が偵察に行ってやろうか?」  不意に声があがった。また沢崎だった。  「なんだと?」  一斉に、三国以外の視線が沢崎に集まる。  「このままここにいても埒があかない」沢崎は誰を見るでもなく視線を上に向けながら言う。「その、元SATの凄腕刑事さんがこの場を離れるのが不安なのもわかる」  今度は、遠藤や大熊、佐久間の視線が東谷に集まった。驚いたような顔をしている。  「刑事さん、元SATなんですか?」  いきなり三国が顔を上げながら言った。そして、這うようにしながら東谷の方に向かってくる。「助けてください。僕を助けて」  珍しい動物、いや、おぞましい害虫でも見るように、遠藤や大熊が三国を見下ろした。  「おまえ、いい加減にせんか」    木戸が三国の後ろ襟を掴み、床から引きはがすように持ち上げると、元の位置に投げ落とすようにした。  「うぎゃっ」と情けない声をあげた三国は、呆然として木戸を見上げ、そして目を伏せた。ようやく耳障りな啜り泣きが消えた。  「話を元に戻そう」気を取り直して言う東谷。「自分が偵察に行く。手薄になるのが嫌なら1人でいい。10分で戻るから、その間木戸さ……」  「待てよ」沢崎が遮ってきた。「そうじゃないだろう。俺が行ってやるという話になっていたはずだ」
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