プロット

15/15

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
 それを聞いた永朔はすぐに理解し、ニヤリと笑うと「当たり前だろ」と言った。  永朔、加奈、そして歌春が目を閉じ静かに立つ。  彼らは帰るべき世界をより鮮明に思い出していた。  歌春の存在がかき消える。  それでもまだ終わりではない。神がもういいと言うまでは帰るべき世界のイメージを強く持たなくてはならない。  永朔はゆっくり目を開けた。  歌春はゆっくり目を開けた。  教室だ。そして自分の手は、まるで誰かの肩を掴んでいたかのように宙に差し出されている。  手を下ろし周りを見れば、ほとんどの者が立ち尽くしていた。──召喚された直前と同じように。  しばしの静寂。そして爆発したように歓喜の渦が起きた。近くの者と抱き合い、握手し、ハイタッチし、泣き合い、喜びを共有していた。  その賑わいの中、静かに教室の前へ歩む人物がいた。その男の姿を認めた者から口をつぐむ。  彼が教壇に立つ頃、教室は静かになっていた。  ふたりが欠けたクラスを見渡す。  永朔はただひとりあの世界を生き抜いて帰還した者として、口を開いた。 「みんなは何かしらの形で見ていたかもしれない。でもちゃんと俺が話すよ。  あの世界で俺が見てきたもの、聞いてきたこと、全部」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加