0人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後、図書室で図書委員の仕事をしていると、ピアノの音が学校に響く。
音楽室は防音設備があるが、弾いている本人が窓でも開けているのだろう。
時には激しく、時には緩やか、時には優しく。
様々な旋律を奏でながら、私はピアノの音をBGMに仕事をしながら、本を読んでいた。
最初は美しい音色に驚いたものだ。
雨の日には聞けぬ、その音にいつの間にか惹かれていった。
その日、
偶然、音楽室の前を通った。
扉が少し開いていた。
私は気になって、見てはいけないとわかっていても扉の隙間から中を見た。
ピアノを弾いていたのは同じクラスの男の子だった。
会話もしたことはなかったが、彼のピアノを弾いている姿は美しい。
私は心からそう思った。
気になって気になって仕方ない。
でも、あまり見つめているのも恥ずかしくて
いつ彼に見つかってしまいそうで怖くて
私はその場から立ち去ってしまった。
彼がこちらをみていなかったか心配になったが数日彼からは何もなかった。
ホッと私は安堵したと同時に寂しい。
今日もいつもと変わらぬ仕事をする。
優しい音色が学校中に響く。
隙間から覗いた姿が目に浮かぶと同時に聞こえる音楽を重ねる。
今日も彼は美しい旋律を奏でる。
最初のコメントを投稿しよう!