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難しいけど、多分簡単なことじゃないけど、挑戦してみたい。
矢田は泣きじゃくる倫也の顔に唇を寄せる。
そしてそのまま静かにキスをした。
倫也は息を殺してそれを受け止めて、唇が離れると同時に大きく息を吸い込む。
驚きのあまりか倫也の涙は引っ込んだらしく、満足気に矢田は微笑む。
「俺も、お前が好き」
信じられないといった具合で倫也は大きな目を更に大きく開いて、矢田をじっと見つめていた。嘘か真か探るような視線に頭をくしゃっと撫でてやりながら「男同士で付き合うとか、途中で嫌になっても、後戻りできねーぞ」と念をおす。
「うん・・うん・・嬉しい・・」
倫也は精一杯頷きながらくしゃっと笑うので、その笑顔の可愛さといったら、もう何でも良くなってしまうほどで。
矢田のくだらないプライドなんか、結局、倫也の真っ直ぐな気持ちに勝てるはずもない。
その日は電気を止められていたし、倫也を残していけないので、バイクでアパートに連れ帰って来た。
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