世界はハートで壊されて

19/19
268人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
 見られたくない人に見られてしまった罪悪感と、その人に見なかったことにされたやるせなさ。  倫也は駆け出した足を止めることができなくて、ただ走った。  胸がムシャクシャして、息が止まりそうだった。  吐き気がこみ上げて、よろよろと立ち止まり、そのまま壁にもたれてうずくまる。急に走ったせいだろうか。それとも甘いものを食べ過ぎたせいだろうか。  お腹の中はひっくり返ったように気持ち悪い。 「ハァハァハァハァ」  肩で息をしながら、必死で吐き気を堪えるのだが。  脳裏では晴人がゆっくり目を逸らした瞬間をプレイバックして見せる。 「は・・る・ちゃ・・・」  久しく呼んでいない名前が唇から零れた。  他人よりも、どんな人よりも、遠くなってしまった。 (・・・も・・やだな・・)  涙がこみ上げて、歯を食いしばる。  楽しかった小学生時代。毎日、晴人と通った通学路。中学校へ上がっても、毎日迎えに行くよと言っていた晴人。  倫也は春休み中に引越しってしまったので、その約束は果たされることはなかった。  何もかも、変わってしまった。  何もかも、だ。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!