271人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
「そうなんだ。でもあんなに怒って、どうしたんだろうね。良い人なんでしょ?」
わざとらしく晴人は首をかしげる。
「うん、普段はすごく優しいよ・・・今日は俺が悪いだけだから」
口にしながら、重くなる足取りに倫也は視線を落とす。
「そう・・確かに、倫也って人に頼る癖があるからね。あんまり甘えすぎると負担になって重いよね」
倫也は晴人の言葉に立ち止まる。
「ちょっと距離置いた方がいいんじゃない?」
なおも晴人は真顔で続ける。
「世話になってるんでしょう? 怒らせちゃったなら、しばらく時間を空けるとかさ。相手のこと考えてあげたら?」
倫也は見る見る泣きそうな表情になる。
それを内心ほくそ笑みながら晴人は「僕だったら、そうするな」と明るく笑い飛ばす。
「あれ? どうしたの、倫也?」
返事をしないでじっと黙ったままの倫也の顔を覗き込む。
「ううん、なんでもない」
倫也はぎこちなく首を横に振る。
「ねえ、遅刻しちゃうよ」
晴人はそう言いながら自転車をおしながら歩いて行く。その後を追うようにトボトボとした足取りで倫也も続いた。
学校へ到着してからも倫也の心は暗く晴れることはなかった。上の空で授業を受けながら晴人の言葉を反芻してみる。
『倫也って人に頼る癖があるから』
晴人にそう言われたことが少なからずショックであった。
小学校時代に倫也の面倒を焼いてくれながらも、負担になっていたのだろうか。
それに気付かないでいたのは、結局自分だけで。
どんどん相手の重荷になってしまう前に、相手の気持ちを考えなくちゃいけなかったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!