神様、このひとをください。

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「そうなんだ。でもあんなに怒って、どうしたんだろうね。良い人なんでしょ?」  わざとらしく晴人は首をかしげる。 「うん、普段はすごく優しいよ・・・今日は俺が悪いだけだから」  口にしながら、重くなる足取りに倫也は視線を落とす。 「そう・・確かに、倫也って人に頼る癖があるからね。あんまり甘えすぎると負担になって重いよね」  倫也は晴人の言葉に立ち止まる。 「ちょっと距離置いた方がいいんじゃない?」  なおも晴人は真顔で続ける。 「世話になってるんでしょう? 怒らせちゃったなら、しばらく時間を空けるとかさ。相手のこと考えてあげたら?」  倫也は見る見る泣きそうな表情になる。  それを内心ほくそ笑みながら晴人は「僕だったら、そうするな」と明るく笑い飛ばす。 「あれ? どうしたの、倫也?」  返事をしないでじっと黙ったままの倫也の顔を覗き込む。 「ううん、なんでもない」  倫也はぎこちなく首を横に振る。 「ねえ、遅刻しちゃうよ」  晴人はそう言いながら自転車をおしながら歩いて行く。その後を追うようにトボトボとした足取りで倫也も続いた。  学校へ到着してからも倫也の心は暗く晴れることはなかった。上の空で授業を受けながら晴人の言葉を反芻してみる。 『倫也って人に頼る癖があるから』  晴人にそう言われたことが少なからずショックであった。  小学校時代に倫也の面倒を焼いてくれながらも、負担になっていたのだろうか。  それに気付かないでいたのは、結局自分だけで。  どんどん相手の重荷になってしまう前に、相手の気持ちを考えなくちゃいけなかったのかもしれない。
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