神様、このひとをください。

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「・・・・なにか?」  玄関前に陣取る二人は倫也に気付くと鋭い眼光を向けた。 「あんた・・・」  思わず倫也は目を見張った。  いつだか母と連れ立っていたあの若い男が立っていたから。  もう一人は誰だか分からないが、身なりからして普通のサラリーマンではないようだ。どちらとも色物のワイシャツを着用しており、大きくはだけた首元には金のネックレスが鈍く光っている。 「よお、兄ちゃん、会ったことあるよなぁ。恵美の倅だったか」  歳は三十半ばといった所か、長い髪の毛をオールバックのように流している男は咥え煙草で母の名前を呼ぶ。 「・・・・」  一体、なんのつもりで待ち伏せしているのか意図が掴めずに倫也は押し黙りながらも怯まずに対峙する。 「かーちゃんは?」  倫也は眉をひそめる。 「知りません、仕事じゃないですか」  この時間は出勤している頃だろう。 「ああ、仕事ね、お店には顔出してないみたいなんだわ。だからこうやって家で待ってれば恵美に会えるかなーって思ってたんだけど」  母が仕事に行ってないなんて初耳だった。 「・・・え・・・」  思わず声を出してしまう。 「・・あれ? ぼくぅ、知らなかったの?」  男はニヤリと唇を歪ませた。 「息子ほっぽりだして、仕事もしねーで、どこ行ったか分からねーなんて、ひでー、かーちゃんだな」  砂利を踏みしめながら男が倫也へ近づいてくる。  男がゆっくり近づいてくる距離と比例して心臓が早鐘を打つ。嫌な予感が水面を揺らす。 「かーちゃんにさ、金貸してるんだよねー」  男は青ざめて唇を震わせている倫也に小さく耳打ちする。
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