神様、このひとをください。

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 遠くから声が聞こえる。  倫也は自宅の庭で水遊びをしている。  ホースから水を勢いよく出して、それをシャワーのように降らせると虹がかかって、思わずバルコニーのイスに座っている母へ振り向く。 「お母さん、すごい! 虹だ!」  母は日除けのあるイスに座って、はしゃいでいる倫也を微笑みながら見つめている。  白いカーディガンが風に揺れている。  水しぶきを浴びながら、キラキラ光る視界で緑葉が眩しい。 「倫也―、なにしてるんだ?」  父さんも倫也の黄色い声に誘われるようにリビングの窓からバルコニーへ下りてくる。 「ねー、お父さん、虹!」  はしゃいでる倫也に父が目を細める。 「すごいなー、倫也、おいで」  父が呼ぶので、バルコニーの下まで駆け足で行く。 「いいか、虹は太陽の光が空気中の水滴で屈折して反射するからできるんだぞ。だから雨が降れば虹ができるんだ」  父は虹の仕組みを教えてくれた。 「そうなんだー」  倫也は太陽を仰ぎながら、雨が降った後は必ず空に虹がかかると信じていた。  だから、雨が降っても大丈夫だと。  悪いことがあれば次はきっと良いことがあるんだと。  未来は希望に溢れていると信じて疑わなかった。  こんな穏やかで平穏な日々が簡単に壊れてしまうとは知らずに。  倫也は泣きながら目を覚ます。
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