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伸ばされた手と倫也の顔の交互に見つめて、矢田は優しく微笑んで、宙に浮かぶ手を両手で包む。
矢田の温もりに包まれて本当に幸せだと思った。
「ごめんなさい、今日」
力なく謝る倫也に矢田は眉を寄せて「俺が悪かった」と倫也の手を頬に当てる。愛しげに見えるその仕草に胸がどきんと音を立てる。
「イオリさん、好きです・・」
考えるよりも言葉が先に出ていた。
倫也の世界が暗く閉ざされそうになる度、救われる。
太陽の光のような矢田が好きだった。
頼りたくないし、負担だってかけたくない。
本当は助けを求めるべきではないのだって、分かっている。
だけども、倫也には矢田が必要だった。
手を伸ばせるのは、この人しかいない。
伸ばした手を取ってくれるのも、この人しかいない。
神様がいるのなら、お願いをしたい。
ああ、神様、どうか、どうか、この人を俺にください。
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