あらすじ

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 友達と過ごす、ただ楽しいだけの夏休み。十年ぶりの故郷に期待していたものは跡形もなくなっていた。めもりはたまらなくなって叫び、駆け出す。  辿り着いたのは浜辺の塔。島の神様と出会った場所だ。十年前の夏、たったひと月の間だけ、めもり達は神様と過ごしたのだった。  塔でめもりを迎えたのは、少女姿の神様;久遠神(くおんのかみ)=(くおん)。十年前と同じワンピースに麦わら帽子で、しかし成長した姿で不敵に言い放つ。 「おかえりじゃ、めもり。わしと遊ぼう!」  あの夏の終わりにみんなで交わした約束を、神様は覚えていたのだ。  ――またみんなで遊ぼう。  くおん曰く、ちゃんと神様に成るためには約束を果たしてもらわないといけない。つまり二十歳になっためもり達と思いっきり遊びたいのだという。昔みたいに、という条件付きで。 「ただいま」  そしてめもりは、彼女の手を取った。  子供じゃないけど、大人でもない。前に進みたいけど、踏み出すのが怖い。そんな思いを抱えた少女たちは、奔放なくおんと共に島中を駆け回る。笑ってふざけて、喧嘩もしたり。昔みたいには行かないから、戸惑うのは当たり前で。けれどあの夏はもう来ないから、大人になるしか選べない。  それは夏色のグラフィティ。切ない痛みを抱えた少女たちに、今日も故郷の風は吹く。
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