第一話 魔物を討つ人々――2

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 それから三十分ほどして、団全体の出発準備が整った。ナツキや彼女のいる戦闘班二班はそれほどでもなかったが、とうに準備を済ませていた戦闘班一班は、なんだかピリピリとしているようだった。兄からああして声をかけられたのは今回が初めてだったけれど、そういえば最近はこういうことが多かったのかもしれない。ここのところはいつでも戦闘班一班が、出発の準備を一番に済ませていたように思う。先を急いているわけではないのだろう。出発の時間を早めようなどということは、会議でも一度も言われたことはない。ただ予定時刻のぎりぎりまで準備をしているのが、何か気にくわないのかもしれない。  索敵班、戦闘班、本陣班が整列し、その前に団長アルルクと補佐のマハルが立つ。そして団長の大きな声が響いた。 「(みな)のおかげで物資の補給も終わり、出発の準備は整った」  団員たちの表情を見る様に、アルルクは顔を左右に振る。 「次のアルバスまでは一週間を予定している。しかし、これはあくまで今まで通りに魔物の討伐が進めば、ということになる。皆も感じているように、今は魔物の出現状況がこれまでの経験から少しずれている。これはここ二百年のゼートの活動記録を見ても例がないことだ。  幸い今まで、私が団長になってからこの団員の中から死者は出ていない。相手がどう変わろうとも、私たちがやることは変わらない。自分たちの命を大切にし、町の人々を守るために、全力で魔物を討伐する。今いるすべての団員が、誰もかけることなくアルバスまでたどり着くぞ!」 「「「はい!」」」  団長の言葉に、一四九人の団員が一斉に返事をする。その声が夕暮れの空に溶けて消え、団長が出発の合図を送った。 「よし、出発!」     
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