ツイてる二人

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 やられっぱなしは癪だった。それならこっちだって負けていられない。  夏休みを目前にした土曜の午後、あの娘が死んだ。  アパートのベランダから転落した彼女はいじめられっ子だった。みんな自殺だと言っていた。でも俺だけは信じなかった。  根拠はある。だって本人が俺の肩越しにそう言っている。本当に事故だったって。死にたいなんて思ってなかったって。もっと俺と一緒にいたかったって。  俺と彼女は付き合っていたかもしれなかった。その日の放課後に告られて、ちょっと考えさせてと言ったほんの数時間に、その恋人候補はブルーシートにくるまれていた。  それが何故か俺の右肩に横乗りして告白のフレーズを繰り返している。わかったから、ちょっと降りてくれないか。だんだん首筋から肩にかけてギシギシとコリはじめてるんだ。耳元で「本当に好きなの」は幽霊でもこそばゆいけど、こっちからは触れないしどかせないし、このまま一方的にオモイを課せられるのはなんとも面白くない。  だから死んだ。俺も幽霊になっちゃえば不公平なカタオモイはお終いだもんな。左肩、覚悟しとけよ。
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