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「約束は、守ってから新しいのをしろって。俺は守ったぞ?」
何も掴むはずのなかった手が何かを掴む。
ここにいない筈の、何よりも守りたい人物の手を。
「リ、ン?」
「おう。毎度毎度さっさと自分を世界に渡して、どうせ覚えているのは私だけだし時間が経ったら平気だろう、次に出会ったら今度こそ一人で生きるぞとか絶対に出来ないことを決めて、やっぱりできなくてまた守るために世界に自分を貢ぎ続ける、残された人間を泣かせまくる常習犯をようやくギリギリで止めたリン・レオーネだ」
恨みがましく、私にとっては耳が痛すぎる言葉をさらりと言ってのけた手の主はそのまま私をすっぽりと抱きしめる。……って、え?
「お前の魔法は遮断っと。うわっ、本気でギリギリだったな。これ以上世界に削られたら流石に俺でも遮断は無理だったわ。身体ボロッボロだぞ。……あー、こんなに毒移して。よくお前立っていられるよなぁ。とりあえずは治療だ。説教と説教と話し合いはその後」
何か言い返そうにもリンはその隙を私に与えない。
というか何一つ状況が飲みこめない私だけども、魔法が中断されれば世界を救えない。
それだけは絶対だ。
「い、いや、世界! 滅んじゃう!!」
「滅ばない」
「はっ!?」
「とりあえずの手は打った。今は応急処置だけだが。……俺だってただただお前を失い続けたわけじゃない」
「失い続けって……え!?」
「もう寝とけ。折角届いたんだ、これ以上命削られて世界に奪われても困る」
――それは、世界の転機。
繰り返し、停滞し続けていた世界の新たな一歩。
少女を恋願った少年の、届いた願い。
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