第1章

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お題「私が死んだ理由」 「あーあ……またやっちゃった」  お気に入りの蒼いワンピース。アイツが真顔で褒めてくれたワンピースがばさばさと風に揺れる。  誰もいない、いるはずのない世界の心臓たる場所。  やけに風が強いその場所で、私は苦笑した。 ――もう幾度も体験してきたけれど。  何回経験しても慣れない恐怖と、心の底からの安堵。  それでもやっぱりカタカタと小さく震える身体を抑えて、私は世界に何度目かになるか分からない忠告をする。 「【私】の存在は無限じゃない。いくら魂を縛りつけても、所詮は多少力を持っただけの、ただの人。……もう、尽きかけよ? 今度こそ次は無い。貴女も分かっているでしょう?」  問いかけに世界は応えない。応える気が無いのか、応える力すらないのか。  どっちなのかは分からないが、どちらにせよ私はもう決めているし、告げたのは事実でしかない。  私はやれやれと嘆息し、広がる湖へゆっくりと一歩踏み出した。  この強い風の中で細波一つたっていなかった湖は、私が歩き出すとぽつぽつと水紋を浮かばせる。  足の裏に感じるひんやりとした水の感覚。不覚にも慣れてしまったその感覚を踏みしめながら、湖の中心まで歩を進める。 「【ルーレリア】、貴女は……私は、間違っている。誰か一人が犠牲になって世界を廻らせても、それは我儘でしかない。世界を停滞させる我儘。あるべきは刹那ではなく、その先。……分かっては、いるんだけどなぁ」  世界が壊れかける度、何度も……そう、何度も【ルーレリア】は世界のために存在を捧げてきた。  世界の中で生まれた無数の命が世界自身を滅びへと向かわせる、その度に。 ――時には、手遅れになるまで世界は傷つき。 ――時には、感情を瘴気に堕とし、毒と振り撒いて世界を蝕む。  世界は滅びに瀕し、しかしとある存在を見つけた。  傷ついた世界を補い、侵す毒を移し替えられる稀少な器。  唯一、毒を浄化できる世界の自浄作用になりうる存在。  それが私。【ルーレリア・ロクシィ】。  たまたま魔法が人より大きくて、たまたま人より世界と相性がよかっただけの、何の変哲もない命の一つ。  けれど、世界にとって手軽で便利な【ルーレリア】と、世界を愛してしまった私の利害が一致してしまった。
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