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―…酷い寝覚めだった。
勢い良く上体を起こす。…寝汗。額、こめかみ、首や、脇の下。いや、全身だ。びっしょりと、まるで頭から思い切り水を被ったように濡れていた。
「…っ、ぁ…」
咄嗟に、枕下にまるで隠す様に置いていたスマホを片手で探す。
快眠アプリの音楽を聴くのは、音量を無音の状態から二つだけ上げて、枕下に入れておくのが耳に調度良い。30分のタイマー設定はとっくに終わっていたから、探し当てるのは指先の感覚に頼る他なかった。
暗闇の中で指先に求めていた機械特有の硬さを覚えると同時、画面を真っ暗な状態から、側面のボタンをカチリと押して、明るく映し出す。
指紋認証機能が素早く起動、認識を完了し、ホーム画面が暗闇にぼやりと浮かぶ。目的であった、表示されたデジタルの時間表示には、「AM:5:08」と表示されていた。
「…、……っはー」
もう一度ボタンを押す。画面の明るさを落として、両腕で顔を、正確には両目を隠す様にして、長く息を吐いた。
心臓がバクバクと高鳴っているのがわかる。全身が小刻みに震えていた。
まだ、起きるには早い。
朝7時には起きて仕事の支度をしなければならないから、まだほんの4時間程度の睡眠時間しか得られていない身体の為にはもう一度眠るのが良いのだと頭では理解している。
けれど、さっきまで見ていた夢の内容が今もなお眼前に鮮明に再現できるほどに脳裏にこびりついていて、なかなか二度寝をしようという気分にはなれない。
僕は両腕を退かそうとして、すぐにそれをやめる。
少しだけ朝を感じさせる様に青みがかった光が暗闇を抜け、カーテンの隙間から部屋に差し込んで来た事に夏を感じて嬉しくなったのは、学生の時までだ。今はその青い光を視界に入れるのが、酷く憂鬱だった。
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