水槽さん

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 水槽さんは、つるつるのガラスでできた美しいからだが自慢でした。  どこのどんな水槽と比べても負けないくらい、なめらかで曇りなく透きとおるガラス肌は、それはそれは見事に磨きあげられていたからです。何枚ものガラスをつぎはぎした安物とは違って、四つのかどはどれも丸くととのえられ、つながった一枚の板でできているところも自慢のひとつでした。  水槽さんは、自分の扱われかたについても同じように大変誇らしく思っていました。水槽さんの持ち主は、水槽さんを家中でいちばんしっかりした台の上にのせ、暇さえあればいつでもその前に腰かけて、うっとりと眺めているのです。水槽さんの中にはいつでも綺麗な水がたたえられ、ふんわりとした水草や、かわいらしく泳ぐ魚たちといったたくさんの素敵なものが飾られました。少しでも苔が生えれば、すぐさまこすって落としてくれるので、内がわも外がわもいつでもぴかぴかです。  あるときは色つきの水でお洒落に、またあるときは小さな魚たちが群れて連なるアクセサリーを、といったふうに、中の飾りはさまざまに替わってゆきましたが、とにかくいつだって水槽さんのすがたは完璧でした。
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