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もう僕に戸惑いはなかった。この機体は使い慣れている。いつの間にか着替えていた、君と対となる青いパイロットスーツも僕専用のもの。
「受け入れたんだな。じゃあもう一度訊ねよう。ミナト、おまえが死んだ理由はなんだ?」
パッセンジャーシートに座った君に僕は思いの丈をぶつけた。
「僕は死んでなんかいません。クラヴィス、あなたを助けるために僕はここに来たんだ!」
「正解だ、ミナト!」
フルスロットルで宙域を飛び立つ。僕の駆る、君の瞳と同じ色をしたロボットは光の速度でまっすぐに宇宙を切り裂いていく。
「コントロール。こちら、ミナト・ナナセ少尉。作戦は成功。クラヴィス・マクレガー大尉を無事に救出しました」
感度のよくない通信から、味方の歓声が届いた。僕は敵に傍受されないように一時的に通信を切って隣のクラヴィスに、
「敵は月の裏側に集結しつつあります。大尉の新しいグランドリオン・アケーシアは最終調整が完了して月基地に搬入済みです。僕らもこれから月に……」
ミナト、と君が僕の言葉を遮った。
「このまま話が進むと、きっと俺とおまえは今の自我を失くすだろう。俺たちが創造主のことに気がついたなんて、あってはならない設定だからな」
そうか。今の僕の意識はなくなってしまうんだ。ミナトになる前の名もない兵士だった自分が少しずつ薄れていく。
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