君が最後に伝えたかったことを、今から僕は訊ねに行こうと思う

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「目をとじて。三つ数えるんだ」  僕はその言葉に素直に従った。  ゆっくりとカウントを唱え、三、と言った途端に体がふわりと軽くなった。 「これでいい。ほら、目を開けて自分の姿を見てみろよ」  言われるがままに瞼をあけて、掴まれていない左手を確認する。真っ黒に焼け爛れていた手はすっかり元に戻り、下級兵が着るグレーのパイロットスーツの袖に覆われていた。  驚いて君に目を向けると、君は特別仕様の赤いパイロットスーツを着こなしていて、腹の穴は跡形もなくふさがり、右腕もちゃんとついていた。  君は何事もなかったように右手で金色の前髪をかきあげると、 「さて、おまえのことを詳しく知りたいんだが、まずは名前を教えてくれないか」  名前、と言われて僕は困惑する。僕には名前なんてない。そもそも名を呼ばれるような立場でもない。  僕の戸惑いがわかったのか、君は、「なんだ。まだ名がなかったのか」と言うと、青い瞳をしかめて眉根に皺が寄った顔で僕をじっと見つめた。  精悍なその顔であまりに長く見つめられるものだから、僕はどうしていいかわからない。君の視線から逃れたくて、少し顔を背けた。 「ミナト」  ふと、君が小さく呟いた。 「ミナトって名だそうだ。どうだい? 気に入ってくれるかな」  呼びかけられたその名前を反芻してみる。その他大勢の兵士のひとりだった僕に与えられた名前。何度か呟いてみたら、以外にもその名はしっくりと僕に馴染んだ。
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