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「それでは、あらためて。ミナト、どうしてここに来たんだ。あれから世界はどうなった」
「大尉が敵母艦を墜としたあと、確かに世界は平和になりました。でも、半年も経たないうちに、前とは比べ物にならないほどの兵力で奴らは戻ってきたんです。どうも僕らが戦っていたのは奴らの先遣隊で、今は本隊と戦闘中なんです」
君が悔しそうに唇を噛む。
「それで、人類は俺と同じ方法で敵艦を駆逐する作戦に出たのか」
「参考にしたのかも知れませんが、同じではありません。あのとき、大尉は敵の動力部にあるクリスタル核にしがみついて機体を自爆させました。あの行為が成功したおかげで敵艦の中心部に侵入し、コアさえ傷つけてしまえば、その膨大なエネルギーの逆流によって敵艦の自壊を促せると司令部は気づいたんです。そしてすぐに作戦が練られて……」
「ああ、もうわかったよ。上の連中はなるべく犠牲の少ない方法を考えたんだろうさ。だけどミナト、それでもおまえは死んでしまった。なぜ率先して作戦に志願した? ほかにふさわしい奴がいただろう?」
君が不思議そうに訊ねる。確かに僕のような凡庸なパイロットが、こんな大きな作戦の一番重要な役割りを任せられるなんてありえないんだろう。本来ならば、君のようなエリートパイロットの弾除けで死んでしまうのがオチだったから。
「ここにはほかの兵士たちは来ていないんですか?」
「俺が会ったのはミナトだけだ」
死んだ者が皆、ここに来れるわけではないのか。
でも、これでやっと君に訊ねることができる。あのときの、あの言葉の続きを。
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