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「クラヴィス大尉。大尉はあのとき、僕になにを言いたかったのですか」
「あのとき?」
「最後の通信が途切れる直前、画面越しだけど僕は確かに大尉と目が合いました。そして大尉は僕に向かってなにかを言おうとしたんです。僕はそれがずっと頭に残っていました。そして無性に答えが知りたくなった。僕があの作戦に志願したのは、大尉と同じように死んだなら、あなたが言いたかったことがわかるのかもと思ったからです」
「……それがおまえの死んだ理由だと?」
はい、と返事をしたら黙っていた君が急に顔をくしゃっと歪めた。でもそれは苦しいとかつらいといった表情ではない。
ククク、と君の肩が細かく揺れると、次の瞬間に大きく笑い始めた。
「ハハハッ! まさかあれが! あれがおまえの発現するフラグだったとは!」
なにがおかしいのだろう。君は治ったばかりの腹を抱えてひとしきり笑うと、ひとさし指で涙を拭いながら僕に訊ねた。
「なあ、ミナト。いつから俺を意識するようになった?」
いつから?
「さっきまで名前も覚束ないようだったけれど、今はどうだ? 自分のことについて、なにかわかったんじゃないか?」
自分のことについて?
僕は名前もつけてもらえない、平凡な一兵士で……。
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