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次は麺のほうだ。一気にすすろうと、麺に口をつけた瞬間、バチッと音がして、唇に痛みが走った。
スープのときには来なかった電撃が、麺では来る。なぜだろうかと思ったが、よくよく考えると、麺の端がスープに浸っている。レールから供給された電気が、どんぶりからスープへ、スープから麺へと流れているのだ。
思い切って、麺を頬張る。舌に感じるピリピリとした刺激が、新しい味を感じさせる。一気に頬張ると、脳天を突き抜けるような刺激になり、目の前を星が飛ぶのが見える。
新しい味覚との出会いに興奮して、心臓がバクバクいっている。夢中になって食べ続けた。
しかし、楽しい時間もあっという間に終わりの時が近づいている。もう数口も食べれば、麺はなくなる。あとは、香ばしいスープが残るだけだ。
少しがっかりしていると、店主が電極を持ち出した。
「電気、追加しておきますね。」
残り少ないラーメンに電極を突っ込み、バリバリと充電し始めた。替え玉ならぬ、替え電気か。
電気が冷めないうちに食べつくそうと、残った麺を箸に絡め取り、一気に吸い込んだ。
脳天を直撃する刺激。眼の前は星で真っ白になり、心臓は限界まで鼓動を早める。
ビリビリとした刺激に包まれて、意識が遠くなって行く。真っ白になった視界には、今まで食べたラーメンたちが走馬灯のように浮かんでは消えてゆく。遠くで店主が呼んでいる。
「お客さん! すぐ救急車呼びますからね! 」
何を言っているんだ? 私は今、幾多のラーメン達に迎えられて、新しいラーメン世界へと旅立って行くのだ。こんなめでたい時に救急車がどうしたというのか。救急車ではなくボートが必要なんだ。
今、目の前にある、ラーメンの川を渡らなければならないんだ。
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