私が死なない分岐点

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私が死なない分岐点

 ――視界が、赤く、赤く染まってゆく。瞬きする程に、見える景色は暗く狭くなった。 葛藤して、自問自答して、答えが見つからないまま、多分今は本来の寿命の1/3あたり。けれども、私の全てはここで終わるらしい。  自業自得かなぁ。私は、それだけの事をした。関係のない人まで巻き込んで、悲惨な最期は当たり前よ。今更自分の命に未練はないけれど、運命を変える分岐点があるなら、そこでやり直したい。関係のない人が苦しむ事がない選択をし直す事が出来たら――  +++++   許せない奴がいた。  大嫌いなのに、いつまでもしつこく私の記憶に纏わりつく。  あいつが、私の日常を奪った。笑うことも怒ることも、声も、涙も、人格すらも失った。  原始的な顔とその所作も、ツンツン尖った卑しい茶髪も、ダサく着崩した腰パンも、グループで人の机を囲って騒ぐ下品な振る舞いも。頭も性格もクズで底辺野郎のくせに、偉そうな態度も大嫌い。自分のことは棚に上げて、私の心を抉るように、声高らかに笑う。ゲラゲラ、ゲラゲラ、ギャラギャラと。あの醜く震える喉元をかっきって、血が噴き出す音で黙らせてやりたい。そう考えてしまっていた私は、軽蔑されるべき人間だ。     
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