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景色がすっかり白一色となった冬真っ盛りな今日。私『井月美織』は友達の『村本亘』と一緒に一面に広がる雪の中を歩んでいた。
「今日も寒いね。手がかじかんできそうだよ」
「そうだね。僕はすっかりかじかんでるけど」
そう言って見せてくる亘の手は機械のようにぎこちなく動く。
「亘って相変わらず男らしくないよね」
そんな私の言葉に亘は「うぅ……」と項垂れる。
「冗談だって冗談! ……たぶん」
「全然信憑性がないよ! まあいいけど、自覚してることだし」
亘をからかいながら、いつものように他愛のない会話をし、一緒に下校をしていた。
私自身、学校では友達も多く、自分で言うのもおかしいがそれなりに勉強もできるほうだと思う。如実、学校での成績は常に学年上位を入学当初から維持している。今は毎日が楽しく、青春を謳歌していると自負できるだろう。あと恋人がいてくれれば尚良いのだけど……。
そして、そんな私にとって何よりも幸福を感じれるのが亘といるこの瞬間。
彼と出会ったのは高校一年の時。当時は彼との面識はほとんどなくお互い何の干渉もしなかった。
正直、会ったばかりの時のイメージはいつも一人隅っこで大人しく過ごし、クラスメイトから声を掛けられれば毎度驚いたりおどおどしたりと、なんとも頼りにならなそうなものだった。
そんな彼にお節介とばかりにクラスに馴染めるよう話しかけるようになり、それから徐々に一緒にいる時間が増えていった。初めは案の定、おどおどと会話をしていたが次第に慣れてくると普通に会話も出来るようになり、今ではからかったりしているくらいになっている。
話していると意外と彼が面白いことに気づく。反応がいちいち大げさだったり、好きなことに関しては熱く語ったりと彼の一面を知っていくうちに、気に入ってしまい、いつの間にかその思いが好意に変わっていた。
「ねえ、ちょっと休憩しない?」
このまま足を進めればそれほど時間も掛からずに亘と別れることになってしまう。もう少し彼と一緒にいたいと思った私は適当な理由で寄り道をする。
「いいけど、どこで?」
「寒いし、どこかお店にでも入ろうか」
亘を引き連れ、近くにあるコーヒーショップに向かった。
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