8人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
南入星検問所----
ノックの音がして、ドアが開かれ、第一発見者の小太りの中年火星人の清掃員が部屋に入って来た。
「失礼します…」
まだ動揺しているようで、しばらくドア付近で佇んでいる。
「彼がサクナの遺体を見つけたんです。名前はドラス・トート。臆病な性格で、自分が通報したら真っ先に疑われると思ったみたいで、代わりに私が通報したんです」
ラダは、佇んでいるドラスの元に寄り、事情を説明した。
「気持ちは分かります。こんな制服姿だと変に警戒してしまいますよね。私実は制服嫌いなんです」
リーンはドラスに優しく話しかける。
リーンの場を和ませる一言に笑みがこぼれるパスラ。
ドラスも気持ちが落ち着き、ソファーに腰掛け、肩をしぼめて話をする。
「いつもと同じ時間にあのトイレを清掃するんです。その日もいつも通り清掃していたら、僕たちと同じ色の血が流れてきて…」
「それでご対面って訳ね」
パスラが答える。
「えぇ…でも、なんであんな場所に…」
「遺体のポーズを見ても分かるけど、相当な恨みがあったんでしょうね」
「と言うと?」
パスラの一言に反応するラダ。
「まず「O」の紋章を意味する、円に沿って張り付けられた遺体は、団体の意思で行われた犯行を意味しているはずよ。そして、問題の場所…」
「トイレは排泄する場所=侮辱を意味しているんです。だから、犯人は相当な恨みを持っている」
パスラの話を折るようにリーンが解説した。
「「O」を名乗っての犯行に加え、その遺体をわざわざトイレに置くなんて…」
ラダが顔をしかめる。
その時、リーンがあることに気付く。
「わざわざ「O」を名乗る…「O」の犯行に見せかけている…?」
「だとしたら、犯人は「O」以外の可能性も出てくるわね」
「サクナさんに関係している人物は奥さんのミシエさん」
リーンとパスラが推理を始める。
「待ってください、「O」以外の関係者ならミシエさんの他に反対運動のメンバーもいます」
ラダが推理を止める。
「反対運動?」
リーンが聞き返す。
「「O」は異星人禁制の団体。しかし、その宗風が差別だと非難するグループがいて、今ではかなり過激なようですよ。そこにサクナが所属していた噂がるんです」
「その団体のアジトって分かりますか?」
「ここからそんなに遠くないですよ。確か…南エリアD 12ブロックの廃工場です」
最初のコメントを投稿しよう!