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「なんだと!てめぇ俺たちが火星人だからって差別するのか!」
サクナは熱くなりやすい性格で、ブラセルのむなぐらを掴んだで罵声を浴びせた。
「サクナ!よせ!」
ゼブラとトーマがサクナの両肩を持って止めに入る。
建物内にいた信者たちがざわつき始めていた。
それでも、サクナの怒りは収まらない。
「命は平等のはずだ!異星人だって同じ命を持っているんだぞ!」
「無礼者が!!」
その時ブラセルはサクナの頬にビンタをした。信者を含め辺りは騒然とする。信者たちの崇めていた教祖が目の前で暴力を振るったのだ。
突然の暴力に動揺したサクナはブラセルを突き放し、訴えた。
「こんな差別主義者があんたらの長なんだぞ!変えるべきだろ…団結力はあるはずだ。皆が協力すればもっと沢山の人が救われる。地球人も火星人も関係ないはずだ…あんたも、過去の柵から抜け出すべきだ」
サクナは、ブラセルの目を見て訴え続けた。
「さっきはすまなかった…俺たちの意見も…聞いてほしかったんだ…」
「…いえ…私にも非はありました。…うちは代々人類以外を受け入れていません。神は我々に試練を与えるだけで、救ってはくれない。行動を起こせるのは人間だけです。そう聞かされ育ってきました…」
ブラセルは俯きつつも、人類以外を受け入れない理由を語った。
「あなたの意見も分かります。しかし…それこそ、変えるべきなのでは?今は、異星人と人類が力を合わせる時代だ」
ゼブラが返す。
「…そうですね…私の視野が少々狭かったようです。前向きに検討しますのでお時間を頂けますか?」
ブラセルの表情は通常に戻り、和解したようにも見えた。
「ありがとうございます!」
ゼブラたち三人は深々とお辞儀をする。
「このカードに俺たちの番号が書いてあるので」
ゼブラはブラセルに、個人番号の書いてあるカードを渡した。
「分かりました。明日中には連絡します。…それでは」
ブラセルは静かにドアを閉めた。
「分かってもらえたのか…?」
トーマがゼブラに確認する。
「分からない…さっきの暴動が心配だ…」
「すまなかった…」
サクナが謝罪する。
「過ぎたことだ。おそれにあの発言はブラセルにも非がある」
「…ありがとう」
翌日、サクナの専用端末に通信メールが入った。ブラセルからだ。
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