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episode2 「愛の行方」
廃工場の中では、火星警察北支局の現場チームによる通信ミーティングが行われていた。
今回は、パスラが仕切っているようだ。
データアバターとしてメンバーの仮想人体が映し出される。
初めに報告したのはサクナの妻であるミシエの元を訪ねていたフレイムだった。
どうやら、ミシエ邸の駐車場から話している。
『気になった所は奥さんが美人なことと…そうそう、不思議な匂いがする絶品コーヒーも頂いた』
《おい!そのコーヒーどんな匂いだった!?》
ホリディが声を荒げてフレイムに聞く。「O」の短剣の調査を鑑識に任せ、ホリディとキングも駐車場で通信していた。
『どんなって…花畑のようなラベンダーのような…そんなに飲みたいのか?」
《間違いない…ここで出されたコーヒーと同じ匂いだ…。俺もフレイムと同じく不思議な感覚がした》
「ミシエとブラセルは何かしらの接点があるってこと?」
《調べてみる価値はあるな。フレイム、一旦合流できるか?》
『分かった、俺とホリディたちの距離だと、局が一番近そうだが…』
《こっちの現場はキングに任せる、局で落ち合おう》
『了解』
「他に情報は?」
『言い忘れていたがミシエさんの話だと、サクナは帰宅する日が少なかったらしい。反対運動をしているとか言っていたな…」
「奥さんが美人なことよりそっちの方が重要でしょ!…私たちは今そこにいるわ」
『何?危険は無いのか?連中は過激と聞いたが』
「彼らは、「O」の策略で世間的には過激な反対組織として知られているけど、実はボランティア支援をしている団体だった。「O」は医療機関と繋がっているみたいで、重病人や要介護者に資金提供していたの。でも、援助するのは人間だけ」
『だから差別団体と言われているのか…』
「O」のアジトにいるホリディが口を開く
《その団体の短剣を片っ端から調べているんだが、そろそろ信者全員分が調べ終わる》
「全員分って…本当なの?」
《あぁ、その証拠に登録名簿を渡してきてな…鑑識チームの技術なら、わずかに残った血痕でも逃さないはずなんだが…》
「行き詰ったわね…。実は今、サクナが所属していたグループのアジトで話を聞いたんだけど、サクナは事件から1週間程前にブラセルに呼び出されている…。キング、ブラセルを徹底的に調べて」
《分かった…ブラセルが怪しくなってきたな…》
キングが答える。
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