episode2 「愛の行方」

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用心棒の体当たりによって、キングは、後ろの本棚に叩き付けられる。 衝撃で意識がもうろうとした。両足は肩幅で中腰体勢でなければバランスが取れずに倒れてしまう程だ。 人外のようなパワーだった。意識が遠のきつつも用心棒の姿を確認すると、体当たりした側の腕は赤く巨大化していたのだ。 「火星人か…こいつは…」 用心棒は容赦なく近づき巨大化した右腕でパンチを繰り出す。 キングは素早くしゃがみこんで避け、立ち上がる勢いをバネにして用心棒にアッパーを入れる。そのまま大きくのけ反った巨体を両足で蹴り飛ばす。用心棒は大きな音を立ててテーブルに激突して倒れこんだ。 「効いたか?」 キングが用心棒に近づく、しかし次の瞬間倒れている体勢からキングの足を蹴った。 キングも転倒し倒れ込む。辛うじて立っていたためこの一撃はかなり効いたようだ。 すぐさま用心棒は立ち上がり、キングの首を掴み上げた。足が宙に浮く。 「弱いな、人間は…」 無口だった用心棒が口を開く。 マンションの外に出て、ミシエを探しているホリディは、あることに気付いた。行き交う住人の中にあのコーヒーの香りが微かに鼻に届いたのだ。 「この匂いは…!…動くな!!」 ホリディは、フードを被った一人の住人に的を絞り、ハンドガンを向ける。 「…この匂いはあのコーヒーだ!あんたがミシエ・マンティスだな」 ホリディは構えつつその住人に近づき、フードを掴む。間違いなくミシエの横顔だ。その時だった、ミシエは右腕に隠していたスタンガンをホリディに勢いよく突き出す。しかし、ホリディは右側に避け、右手でスタンガンを持った腕を掴み封じる。そしてハンドガンの持ち手でスタンガンを持っている手首を殴り、スタンガンを落とす。右腕を封じられたミシエを背負い投げで地面に叩きつけ、腕を捻りロックした。警察の基本的な技だ。 「そんな玩具じゃ俺は倒せないぜ」 首を掴みあげられているキングは、すぐ後ろに壁があることを確認し。宙に浮いた下半身を振り子のように大きく後ろに突き上げ、壁を蹴り上げる。その勢いで用心棒に頭突きをする。二人は同じ方向に飛ばされる。その方向は窓の方だった。バランスを崩した用心棒の巨体は窓を突き破り、外に放り出された。 キングは頭突きの衝撃で頭から血を流しつつも窓の手前で止まった。 用心棒は大きな音と砂ぼこりを立てて、頭から地面に落ちた。
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