episode3 「犠体」

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西都市ネスラタウンの現場へパトカーを走らせる。運転はキングだ。 ネスラタウンとは、カジノやクラブ、劇場などが密集する娯楽が盛んな街だ。 巨大な電光掲示板が設置され、街灯の意味を成していない。 北支局から車で30分ほどでそう遠くはない。 運転しているうちに、ネスラタウンが見えてくる。 「ネスラタウンに行ったことは?」 キングが運転しながら助手席のリーンに聞く。 「あります、10年前ですけど。演劇を観に」 「フローネン劇場か…」 フローネン劇場とは、舞台俳優のエルメス・フローネンが20年前に建設した劇場で、今では増築工事され、多くの人で賑わっている。 「知ってるんですか?」 「まぁ、有名だからな」 「フローネン劇場は大きくて見やすいんです」 キングはパトカーをタウンの入り口の脇に止める。 まるでテーマパークのような装飾の施された看板が迎える。 キングとリーンは車を降りて現場へ向かった。 付近をパトロールしていた捜査官たちが非常線を張って辺りを調べている。 鑑識も何人か来ていた。 ビルの5階の窓ガラスが割れ、破片が路地に散乱していた。その中心に若い女性が額から血を流して息絶えていた。横には、一緒に落ちたと思われるひしゃげた車イスが落ちていた。 一人の若い捜査官がキングたちに近寄る。 「お疲れ様です。パトロール課のファイス・トルメンです」 小柄の短髪パーマで褐色肌のファイス捜査官が自己紹介をする。 「キング・ウォンだ」 「リーン・サンテです」 二人も続けて自己紹介した。 「こちらへ」 ファイスが二人を遺体の場所へ案内しつつ調査結果を報告する。 「該者は北都市エリア11在住のコリン・アデマス23歳。人間。舞台女優のようです。鑑識の調査によると、半身麻痺を患っていて車イスを使用しているようです。半身麻痺での女優活動に限界を感じ、自ら飛び降りた可能性が高そうですね」 「舞台女優ってまさか、フローネン劇団?」 リーンがファイスに聞く 「えぇ、詳しいですね」 「この辺りじゃそこしかないですから」 「遺体を北支局に運んでくれ、俺たちはフローネン劇場へ行く」 キングがファイスに指示し、リーンを連れてパトカーへ向かう。 「分かりました」 ファイスは、鑑識たちに指示を出す。
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