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キングとリーンは、パトカーに乗り込み、ナビにフローネン劇場の住所を入れた。
音声ナビと共に、ルートがフロントガラスの反面に展開される。
「15分くらいですね」
リーンはシートベルトを締めながら言った。キングはパトカーを走らせる。
一方、パスラは廃工場をアジトにしている「FRIENDO」の元にいた。
サクナの事件以来、「O」は「FRIENDO」に援助するようになった。ボランティア支援グループの、リーダー・ゼブラと「O」教祖・ブラセルは手を組んだようだ。以前ゼブラたちが利用していたアジトの地下には、難民や介護放棄者、奇病など世間から煙たがられる境遇を持った、人類と火星人が数百人程いる。ゼブラ率いる「FRIENDO」はそういった人々に支援するボランティア団体なのだ。窓は無く埃臭い廃工場を、赤いサイレンが照らす。ガソリントレーラーサイズの巨大な救急車に重病人が運ばれているのだ。
ゼブラと共に活動している、火星人ハーフのトーマが看護師の手伝いをしながら、運転手に聞く。
「おい、あんた。これは何人まで?」
「50人が限界です。一度病院に運んで、また戻ってきます」
「了解。頼んだ」
「「O」の医療支援があれば、アジトの地下の患者は助かるはずだ。感謝している」
ゼブラがブラセルに握手を求める。しかしブラセルはゼブラに背を向けて言う。
「私たちは、人類のみの救済を掲げてきたが、全て間違いでした。なんとお詫びをしたらよいか…私は、あなたたちに…」
「…こっち向けよ」
ゼブラが、背を向けているブラセルに言う。
ブラセルが振り向くとそこには子供が3人立っていた。そのうち二人は火星人だ。
3人は声を揃えて言った。
<<<ありがとう>>>
ブラセルの目には涙が浮かび、喜びと詫びの気持ちが同時にこみあげてきた。
「みんなあんたに感謝してるよ。あんたは過去の柵を打ち破った。協力してくれるよな?」
そこに、パスラが現れる。
「どうも。仲直り中?」
「パスラ捜査官。来てくれたのか…あんたたちにもどれだけ助けられたか」
「困ってる人を助ける。お互い様でしょ」
「助け合いですか…そうですね、同じ生きてるもの同士ですからね。手伝ってもいいですか?」
ブラセルが二人に問う。
「もちろん」
ゼブラが答えると、子供たちも笑顔になった。
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