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キングとリーンは、フローネン劇場の駐車場に到着した。雪だるまのように、球体が上に4つ連なり、外壁は全面がモニターになっていて、公演中や公演予定の宣伝映像が常に流れていて、付近の路地を照らしている。
二人は受付を済ませ、楽屋に向かった。廊下も外壁に沿っているため、ワンフロアが円形になっている。壁の電光版には公演中の宣伝が流れていた。
「「アンドロイドの恋」…」
リーンには思い当たりがあるようだ。
「知っているのか?」
「えぇ、確か主演のアンドロイド役の女性が自己で下半身が付随になってしまって…」
「まさか、遺体の女性?」
リーンが何かに気付いた。宣伝のキャストには死亡したコリン・アデマスの名があった。
「主演…コリン…アデマス…」
「刑事さん?」
その時、楽屋のドアが開き、劇団の関係者が出てきた。
「は、はい。火星警察のリーンです。こちらはキング捜査官」
リーンはいきなり開いたドアに動揺して咄嗟に自己紹介をした。キングも一礼する。
「フローネン劇団員のサズ・ウーザンです。私にご用だとか」
サズ・ウーザンはフローネン劇団のエース的な役者で何度も主演を務めている。
26歳。ピンク色の肌にブロンドヘアーが肩まで伸びた火星人ハーフの美女だ。
サズは、キングとリーンを自分の楽屋に入れた。
楽屋内は豪勢で所々に金の装飾が施された高価なアクセサリーが飾ってある。ワイン色に金の蝶の刺繍が輝くカーテンがメイク用の鏡を覆っている。四角いソファーが四つ並んでおり中央にテーブルがある。キングとリーンにコーヒーを出し、サズも腰を掛ける。
「コリン・アデマスさんを知っていますよね」
リーンが話を切り出す。
「えぇ、もちろんです。彼女がどうか?」
「…亡くなりました。まだ詳しい死因は分かりませんが、転落死です」
「そ…そんな…」
コリンは両手で顔を覆い泣き崩れてしまった。
「…コリンは良いライバルで切磋琢磨してきた友人で……自殺…なの…?」
「今の調査状況だと自殺の可能性が高そうです」
「そう…」
「コリン・アデマスの事を詳しく知りたい」
キングが聞く。
「2年前に交通事故で下半身が付随になって、1年半ほどリハビリをしていた。でも医師からは、脚が動くことは一生ないだろうと告げられてしまった…」
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