episode1 「団体」

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「勉強不足の先輩に教えてあげます」 リーンは屈託のない笑顔で二人の先輩警官をあざ笑いながら説明を続ける。 「宗教団体「O(オーズ)」は人間だけが洗礼を受けられる人間限定の団体です。「O」は円形ですよね。つまり数字の「0」と同じ意味を持っています。教祖は 人類以外の祖先を信用していません。神さえも…。つまり、掲げている「0」とは人類の始まりを意味し、人類だけの世界を造るという意味なのです」 「説明どうも。動機はもう分かってるってことか」 「さぁ…ただこの遺体のポーズがそれを意味するだけです」 「先輩、もうこの手の事件は北に任せましょう。なんだか気味が悪い」 「そうだな…ここは大先生もいる北に任せるとしよう」 南支局の先輩警官はリーンを煽りながら後輩と現場を去っていく。 そこに遅れて到着した、ホリディ・ジョンソンとキング・ウォンのコンビが二人とすれ違う。 「よう!今日の現場は見物だぜ」 すれ違いざまに南支局の二人がホリディとキングを煽る。 「失せろ」 キングは冷たくあしらう。 「相手にするなキング」 「おはようございます!」 リーンは、遅れてきた二人に元気よく挨拶する。 「おはよう、あいつらに何か言われたか?」 ホリディがリーンを慰める。 「いえ、気にしないでください。それより遺体の方を」 「身元は?」 キングが近くにいた鑑識に聞く。 鑑識は、火星警察共通で使われている腕に装着された小型の専用端末で壁に情報を投影した。投影された情報を読み上げるホリディ。 「サクナ・マンティス。火星人。30歳。妻は地球人。職業が…」 「検問管のようですね」 リーンは、血だらけになった社員証を見つけて言った。 「南検問所所属…ここの職員のようだな。殺害プロセスは再生できるか?」 鑑識に指示を出すキング。 「殺害プロセス」とは、警察機関独自に開発された捜査システムで、事件現場をスキャンすることで、推測ではあるが殺害当時の現場の状況をムービーとして再現できるのである。 鑑識は「殺害プロセス」を再生した。 殺害プロセスのデモムービーが投影された壁に流れる。 デモ人体で再現されたムービーには、犯人らしき人影がサクナの喉をナイフで切って殺害、その後に予め壁に打ち付けられていた円型の木片に遺体を張り付けていた。
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